高価なスーツは本当に印象を良くするのか?キャリアにふさわしい一着の選び方

近年、コロナ禍の影響が徐々に小さくなり、対面でのビジネスの場面が増えていることから、弊社への身だしなみ企業研修のご依頼が増えています。特に本年は新入社員様向けの身だしなみ研修が増加しました。

ドレスコードに関してはオフィスカジュアルを採用する企業もかなり増えてきてはいますが、まだまだスーツのほうが適しているシーンも多くあります。そのため、新入社員研修ではほとんどの企業がスーツの基本的なマナーのカリキュラムも希望されます。

ただ、弊社が身だしなみ研修を提供し始めてから今までのこの約15年間の間、大きくビジネス環境が変化したことによって、研修を受ける方たちのスーツや身だしなみに関する意識は大きく変わったと感じます。

10年以上にわたって毎年企業研修を提供させて頂いているクライアント様もありますが、質疑応答の際の研修参加者様からのご質問の内容も深く、高度になってきています。

今回はそんな「研修時に頂いたご質問」の中から、多くの方に参考にして頂けそうなものを取り上げ、その回答と共に詳しく解説をしていきます。

目次

「ある程度キャリアを重ねたら、高いスーツを買った方がよいのでしょうか?」

質問

ある程度キャリアがついてきたら、高いスーツを買った方がいいのでしょうか。
もしそうであれば、いくらぐらいのものを買ったらいいのか、その考え方を教えてください

こちらは20代の比較的若い社員さんからのご質問ですが、キャリアを積み重ねてきた30代以降のビジネスパーソンにとっては、まさに今抱いている疑問なのではないでしょうか。役職が上がったり、職責が増えたりする中で、新入社員や若手社員の頃とは違った装いの必要性を感じている方も多いはずです。

「今のキャリアにふさわしいスーツを」と考えると、まず真っ先に思い浮かぶのはスーツの価格を上げること。というより、むしろそれ以外の方法が思いつかないと言うほうが正確かもしれません。しかし、スーツの価格を上げることは、積み重ねたキャリアにふさわしい見た目を生むのでしょうか?その答えを知るためには、まずは、スーツの価格がどのように決められているかを知る必要があります。

スーツの価格を構成する要素とは 

スーツの価格は、主に以下の要素から成り立っています。

  • 原材料費:生地、ボタン、裏地、芯地(襟の間に入っている芯)など
  • デザイン費等:スーツをデザインしパターン(型紙)を引く人たちの人件費
  • 縫製工賃:パターンに合わせ生地を裁断し、縫い合わせる作業にかかる費用
  • 輸送費:出来上がった製品の輸送費用。海外生産の場合には関税もかかる
  • 販売員等の人件費:スーツの販売に携わるスタッフの人件費
  • 店舗運営費:店舗の家賃や運営にかかる費用
  • ブランド価値:そのブランドがスーツに与える、目に見えない付加価値

どこにより大きく原価をかけるかはメーカーによってもちろん違いがありますが、基本的には、価格が上がるほどこれらの要素が全体的にランクアップされていくと考えて良いでしょう。

スーツの原価が上がれば、消費者が期待するようなクオリティアップが起こるのか

この中で、消費者として「原価を最もかけて欲しい」と思うのが、原材料費や縫製工賃です。値段が上がることでより高価格帯の生地が使えるようになったり、高度な職人技で縫い合わせてもらえるようになるのであれば、出来上がったスーツのクオリティは上がるはず、と考えるからです。
そして、スーツのクオリティが上がれば、目に見えて着る人の印象も良くなるはず……。

そういう期待があるからこそ、「キャリアアップしたら着るスーツの値段も上げた方が良いのでは」という考えに至るのです。

しかし注意が必要なのは「スーツのクオリティアップ」が消費者の想像とは違った結果を生むことも多い、ということ。
というのも、スーツの場合、価格帯を上げると逆に耐久性は下がることがほとんどなのです。

スーツの価格帯を上げると、生地もランクアップします。高級な生地は上品な光沢感があり、しなやかな風合いを持つため見た目は確かに美しくなります。しかし、この見た目の美しさは細い糸で織ることで生み出されたもの。スーツの世界では、細い糸で織られた生地ほど高級。だから逆に、強度は落ちるのです。

つまり、高級スーツは現場で体を動かして働く人のためのものではなく、デスクワークや会議で座って業務を行う人向けということです。

ですから仮に会社でのポジションが上がったのだとしても、スーツ姿で納品するダンボールを持ち上げることがあるとか、営業でハードに動き回るといったような職種の方には、とてもお薦めできるものではないのです。

8万円以下の「ボリュームゾーン」の中でのスーツの価格差を考える

ただ、耐久性が落ちるほど繊細な生地に変わるのは20万円以上のスーツから。いわゆるボリュームゾーンと言えるような価格帯の中で、例えば3万円のスーツを8万円に変えたとしても、耐久性が著しく下がるということはありません。

では8万円以下の価格帯の中で価格を上げていくとどんなメリットが得られるのでしょうか?

素材のランクアップによる着心地の向上

まず、素材の面では3万円程度のいわゆる「プチプラ」なスーツだと一般的にはポリエステルが多用されますが、ポリエステルなどの化学繊維はどうしても蒸れやすいという特性があります。蒸れやすいということは、嫌な臭いの原因にもなりやすいということでもあります。

またこの価格帯だと裏地もポリエステル100%になりますが、静電気が起こりやすいという性質も持つため、この点でも着心地にマイナス面が生じます。

しかし、8万円くらいの価格帯になると、ウール100%の生地を使えるようにになります。ウールは吸湿性と放湿性に優れているため、蒸れる心配がありません。

裏地はポリエステルより単価の高い、キュプラという素材も射程範囲に入ってきます。キュプラもポリエステルに比べると吸放湿性が高く、静電気が起こりにくいという特性があり、これも着心地の向上につながります。

「少し気温や室温が上がると蒸れて不快」「スーツの裏地の静電気で嫌な思いをしたことがある」などの経験があれば、スーツの購入予算を8万円程度まで上げることで満足感を得られるはずです。

シルエットのグレードアップによる見た目の向上

さらに、価格を上げるとシルエットも改善されます。

スーツはカジュアルウエアと違い、伸び縮みしない生地をいくつものパーツに切り分け、それを縫い合わせることで体に添う立体的なシルエットを作り上げています。

そのため、型紙の良し悪し、そして縫製技術によってシルエットが大きく変わります。価格帯が上がれば優秀な型紙をひけるパタンナーが雇えますし、縫製のレベルも上がりますので、スーツも立体的で美しいシルエットに仕上がります。

美しいシルエットのスーツは着るだけで体に立体感を与えてくれるため、主に「貫禄」「存在感」といった印象作りに寄与します。

年齢やキャリアに合わせるというより、「今の自分」にとって最適なスーツ選びが大切

ただもちろん、高いスーツに買い替えたからといって、必ずしも万人に向けて印象が上がるわけではありません。

印象は多くの要因が複雑に影響し合ってできるものだからです。ですからまずはボリュームゾーンの価格帯の中で、着心地やシルエットが良くなる点を期待しながら、その差を感じられるかどうかを試着で確認してみてください。

その中で違いが感じられ、かつグレードアップした良さも十分に感じられるようであれば、そこからさらに上の価格帯を試してみてもよいのではないでしょうか。

しかし、いろんな雑誌やYouTubeで見かける「ポジションや年齢が上がったら、それにふさわしいスーツを」という言説だけを鵜呑みにしてスーツのランクをあげるべきではありません。大切なのは、何のためにスーツをランクアップするのか、ということです。前述の通り、印象アップだけを目的とするのであれば単純にスーツの価格を上げるだけではその目的は達成できませんし、耐久性を期待してもそれは叶いません。

役職やポジションが上がってもよく動く仕事をしている人、荷物を運んだり現場を回ることが多い人の場合には、1点1点のスーツにかける予算を上げるより、買う着数を増やしてこまめにクリーニングに出せるようにした方がメリットは大きいものです。

年齢やキャリアでひとくくりにせず、自分に取ってどんなスーツが良いのかを都度考え、選んでいくのがベストということです。

フォースタイルのスーツ研修では、このように、働く人1人1人が自分に最適なスーツを選べるよう、正しい知識をお伝えしています。身だしなみマナーの範疇に留まらず、服飾の専門知識までわかりやすい言葉に置き換えてお教えすることで、皆さんがファッションを通じたセルフブランディングができるようになる研修をご提供します。

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この記事の執筆者

久野梨沙 久野梨沙 スタイリスト・公認心理師

(株)フォースタイル代表取締役、(社)日本服装心理学協会代表理事、公認心理師。跡見学園女子大学 兼任講師。
服装心理学に基づくパーソナルスタイリングの第一人者。アパレルブランドの企画職を経て独立。経営者や文化人などのスタイリングの他、身だしなみ研修、心理学を活用した接客研修、従業員のメンタルヘルス支援などにも尽力している。

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